久慈光久著『狼の口 ヴォルフスムント』全8巻について『理屈コネ太郎』が僭越ながら解説したい。
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舞台は14世紀初頭の欧州。東西に走るアルプス山脈の中にあって、南北交通の要路となっていたザンクト・ゴットハルト峠。
ザンクト・ゴットハルト峠は周辺の山の民によって開発された交通の要所。それゆえ、その利権は土地の人々のものであった。
そこに、神聖ローマ帝国皇帝の座を狙うハプスブルク家が現れ地域に武力で圧政をしき、人々から峠の利権を奪い、関所を建てた。人々はその関所を狼の口と呼んだ。
その関所は遠方からの旅人には通行税を徴収した上で通行を許可する一方、周辺の土地の人々の往来を阻んでいた。人々を分断して反乱させないためである。
本作は、地域の人々が狼の口と恐れられる関所を陥落し、ハプスブルク家を地域から追いやり、独立を勝ち取るまでの、理念と、戦略・戦術と、兵器近代化が次から次へと衝突する様を描いた漫画であり、第一級のエンターテイメントだ。
物語は、地域の人々がザンクト・ゴットハルトの狼の口を何とか通過して資金調達を目論む序盤、狼の口を陥落し悪代官に制裁を加える中盤、そして歴史上名高いモルガルテンの戦いに戦略と戦術でハプスブルク家に勝利するクライマックスへ、静かに、確実に、そして激しく突き進む。
全8巻、中だるみなしの読み応え十分な作品。神聖ローマ帝国の歴史を知らない人には、一回の通読ではよくわからないくらい内容がギッシリとつまった作品。それでいて、清潔感のある繊細で美しい画と分かり易い構成なので、読み手に苦痛を与えない。
エンターテイメントかくあるべし!と感嘆する作品。
本サイト別頁で紹介したトミイ大塚著『ホークウッド』全8巻(当サイト内当該頁w開く)と合わせて読むと、ヨーロッパの歴史に興味が湧く事間違いなし
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